今回は皆様になじみのある、カンジダ菌のお話をご紹介させていただきます
口の中に生息するカンジダ菌の予防、除菌のための方法についてです
歯の健康管理の方法にはバクテリア補充療法(バクテリオシン)という考え方があります。
最近のTVのコマーシャルでも歯の健康管理とカンジダ菌繁殖の予防のことが紹介されるようになり、「口腔カンジダ菌症」という言葉もよく耳にするようになりました。
口の中にできるカンジダ菌による口腔カンジダ菌症は腸や女性の膣内に繁殖するカンジダ菌(Candida albicans)と同じ真菌です。カンジダ菌は2人に1人くらいの確率で口の中にも繁殖はしていますが、抗生物質の長期多用によって腸内細菌の環境がアンバランスになりカンジダ菌の増殖が起きたとき、体の免疫抵抗力が低下したとき、ストレスが増えだ液中のコルチゾールが増加したときなどに発症することが多いと言われています。また、糖尿病や放射線治療を行っている場合、義歯を使っている方にも発症しやすい症状です。症状は唇やほほの内側の粘膜、舌に白い斑点状の苔(こけ)のようなものができる場合と、粘膜が赤くなる場合の2つがあり、そのままにしておくと痛みをともなう口内炎になることもあります。
口腔カンジダ菌症は乳幼児や高齢者に多いと言われていますが、高齢者の場合には義歯を入れることによる場合がおおいですが、乳幼児の場合には両親や祖父母が口に入れた箸やスプーンで食物を食べさせることで感染することが少なくありませんから注意してください。
虫歯や歯肉炎、歯周病の原因菌の増殖を予防するために、同じバクテリアを使ったバクテリア補充療法がありますが、バクテリア補充療法は抗生物質の効果がないカンジダ菌にも有効なのでしょうか?
口腔カンジダ菌症が見つかった場合には抗真菌薬のうがい薬や内服剤を処方されますが、予防の目的でこれらの薬を使うことは現実的ではありませんね。バクテリオシンの中には口腔カンジダ菌症の原因となるカンジダ菌(Candida albicans)にも有効なものがあります。
ペントシン(pentocin)と呼ばれるバクテリオシンの仲間の1つで、乳酸菌ペントサス菌「Lactobacillus pentosus」が作る物質になります。1999年に南アフリカの細菌学研究グループが乳酸菌ペントサス菌が作り出すバクテリオシンに似た物質のペントシンがカンジダ菌の増殖を阻害することを報告しています。この乳酸菌には50種類ほどの仲間がいて、京都のしば漬けや中国料理に使われる金華ハム(発酵ハム)から見つけられているほか、人の腸内、出産直前の妊婦の膣からも見つかっています。ヨーグルトを作る時にも使われる乳酸菌の1つです。
元来、この乳酸菌ペントサス菌は腸内の乳酸菌として常在していて便の中からも見つかる菌でもあり、人間の便を培養して乳酸菌ペントサス菌を得た日本人による研究では、非常に興味深いことが報告されています。テトラサイクリンという非常に広範囲なバクテリアの殺菌能力を持った抗生物質を添加し培養した結果、大腸菌やほかの乳酸菌群を含むほとんどのバクテリアの繁殖が著しく低下しているにも関わらず、乳酸菌ペントサス菌はこの厳しい条件下でも増殖を続けていたこと。また、培養後にしばらくの間繁殖を続けていたカンジダ菌の繁殖が完全に止まったことです。つまり、カンジダ菌はペントシンによってその繁殖を抑えられたということです。
口腔カンジダ症と乳酸菌の関係
2012.09.21更新
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